死ぬか生きるか。ゼロ100の、鏡花の世界。

婦系図。歌舞伎、大映版、新派と、私も色々観てきまして、で、この新東宝版も、気合いは感じます。

まず美麗アマチを観られる、それだけで結構な満足を得られる訳です。
そして、どのバージョンでも、お蔦さんは可哀想で、新東宝版の高倉みゆきさんも綺麗で悲しかった。
あと、めの惣さんはどのバージョンでも良い人で癒し。

しかし婦系図、まあ、独特というか。この違和感。これ、時代錯誤から来る違和感？と、今まで思っていましたが、今日この新東宝バージョンに触れて改めて分かったのは、古さではなく、何かこの、ゼロ100の鏡花の世界が独特なのではないか？ということ。死ぬか、生きるか。何もかもが大事（おおごと）になる。それが鏡花の魅力でもあると思うけど。

それとようやく今日頭が整理できたのだが、酒井のムカつくところ。早瀬とお蔦さんの結婚を認めないなら、芸者の居る場所にまずテメーが行くなよ、と。テメーは芸者と遊ぶのに、弟子と芸者との結婚は認めないのかよ。まあ、こういう人、いるよね〜。このタイプは、あれだ、風俗利用しながら風俗嬢に色々諭すタイプかね。最低〜

その他、お雛様の牛車を回すなどして季節の移り変わりを理解させる演出、早瀬の絶望を東映みたいな荒波でみせる演出が、ある意味見ものでした。どうにかならんのかこの演出・・・。

出会ったその晩に恋に落ちる若き学士と芸者。

高倉みゆきの大胆さに驚く序盤から急行直下の救いのない展開に気が滅入る。娘と一緒にさせたいという思いがありながら天知茂を置いて帰る佐々木孝丸もちょっとなぁ。

男嫌いの芸者を一目惚れさせる天知の端正さは確かなモノ。

駅のシーンと雪のシーンが素晴らしく、おおっとなった。のですが、よく分からないけれど、脚本が雑に感じ、その分演出が派手で所々笑ってしまった。時折挟まれる不思議なインサートタイムが楽しかったので、あともう一回くらいは観たかった。
途中関係性をかき回そうとする男が出てくるも、みんなに梯子を下されまくりでかわいかった。なので、あの人の物語を観てみたくなった。

昔は面子と本心なら、面子の方が複雑だった。でも、今は面子が無い変わり、本心が大暴れして問題になる方が多いんだろうなと思う。心の時代。