松長もんど

アデルの恋の物語の松長もんどのレビュー・感想・評価

アデルの恋の物語(1975年製作の映画)
4.5
2021.04.16
2022.10.15

あまりにも純粋すぎた、アデルの恋の物語。

英国騎兵中尉アルバート・ピンソンを求め、恋焦がれ、怒り狂い、憔悴するアデル・ユゴー。
そんな彼女を演じたイザベル・アジャーニの美しさと演技力は見事なもので、本作への貢献度は計り知れない。惹き込まれるとはまさにこのことである。
特に印象的なのは、アルバートが女といるシーン。一階から二階へと上がるふたりを離れの建物から追うアデル。ヒッチコック的なカメラワークもさることながら、アデルの表情に注目したい。それはもう恋する女性のそれではないのだ。

アルバートを追い回すアデルの半ば狂気的な行動が強烈で痛々しく、挙句死んだ姉の悪夢にうなされる描写であったりと、全体として重苦しい空気が漂うが、劇場でのペテン催眠術師のシーンといったユーモアも忘れていない。まあアデルにとってはたまったものではないだろうが。

それまで見せていたリアリティのある描写からぐっと引き離した、幻想的にも見えるラストシーンもまた素晴らしい。「これぞ映画だ」という感覚を味わえる。


そして今回、そんな名作を劇場にて鑑賞。『生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険』と題し、トリュフォーの他作品も上映しているが、平日の上映作品は観に行けず。しかし本作を観れただけでも十分である。個人的には大好きな『アメリカの夜 (1973)』も上映して欲しかったのだが叶わず。