shinobu

blueのshinobuのレビュー・感想・評価

blue(2001年製作の映画)
4.0
魚喃キリコのBlueは大好きな漫画だ。内容はもちろんだけど絵や装丁、コマ割り全てが作品にぴったりで好きだ。

だから映画があるのは知っていたけど観なかった。

映画は漫画とは別物だった。
でも、映画も良く出来ていてそれが誤算だった。
映画は桐島カヤ子(市川実日子)の成長物語になっている。
もちろん演技がド下手なやつがいるとか、原作と違うとこが許せないとか不満はあるだろうけどボクはこの映画を愛おしくなった。点数は前にも書いたけど無意味で出来が悪いけど好きな映画なんて山のようにある。
あえてざっくり紹介します。

とある女子高の話。
桐島は無口で何をするのも受け身だ。
桐島は友達として付き合っている遠藤雅美(小西真奈美)を密かに憧れ想いを寄せているが当然言えないでいる。
遠藤はすらっとした美人で髪が長く、タバコを吸い洋楽や絵画にも詳しいみたいで大人びた雰囲気だ。それに対して桐島はまるで(誰か指摘してたけど)奈良美智が書くぶっちょーづらした子供の絵のようで可愛いいけど幼い印象だ。遠藤は桐島に借りたセザンヌの画集を特に気に入る。

ある日、友達に合コンに誘われ参加するがつまらなさそうにただそこにいるだけだった。嫌なら行かなければよい。桐島はきっと仲間からはぶられるのも嫌で独りにもなりたくないのだ。

で、桐島は合コンに来てた男に手を強引に引っ張られホテルに行ってしまう。
ホテルで黙り込み立ち竦む桐島に男が言う。
「おまえさー 処女?」
強引に手を引っ張られ1度は拒絶するが結局ベッドに引き込まれ一夜を共にする。

翌日の学校で遠藤と桐島が一緒に下駄箱にいると合コンに行った友達から責められる。

あんた私が彼のこと好きなの知っててホテル行ったの?それ酷くない?

そう、桐島は彼のことなんて好きではないのだ。図星な事を言われ遠藤にも聞かれ落ち込む桐島。

帰りのバスの中、遠藤は急にバスを停め落ち込む桐島を強引に手を引っ張り海に連れていく。

海を眺める2人。

桐島は遠藤に全てを告白する。
なぜホテルに行ったのか…そして告白する。
遠藤が好きだと。
そして2人はついに

といった内容でまだ漫画も映画も観たことない人で興味ある人は読まないで!
ネタバレ全開でいきます。


桐島は始め大人びた女の子して登場するが桐島が持っている洋楽のCDやセザンヌの画集は男の趣味だった。桐島が好きだった男は既婚者でタバコを吸いだしたのもきっと彼に近づきたかったのだ。

遠藤は、私には何もないから。と言う桐島のことばが分からない。いや、遠藤は色々知っているじゃん。遠藤はまだ何をしたいか分からなくて進学にも悩んでいる。
遠藤は言う、知っているだけだよ。
?…私は貴方になりたいくらいだよ。

そう、遠藤は桐島とおなじまだ何をしたいか分からない普通の揺れる女子高生だったのだ。
遠藤はホテルで男に抱かれ(多分)処女を喪失するがそれは遠藤のように「大人」に近づきたかったのだ。

夏休み。遠藤は男に誘われ桐島にも家族にも黙って旅に行く。

遠藤がいない夏休みのある日、桐島は庭にお水を巻きながら頭からホースの水をかぶり文字通り頭を冷やして考える。なにかしなきゃ。お気に入りのセザンヌの画集を見てデッサンを描いてみる。
思いのほか絵を書くのを気に入った桐島は没頭していく。

夏休みが終わり久しぶりに再会する2人。
桐島は遠藤が男と旅に出行ったのを知っていた。でも嫌われたくないから遠藤は友達といったと嘘を付いてしまう。ギクシャクする2人…

桐島はホテルに行った男を呼び出して相談する。ここで最初は唯の嫌な奴として登場した男がいい奴ではないにしても印象が変わる言葉を言う。遠藤にしても、最初観客にこういう奴なんやな?と抱いた印象をどんどん裏切るのは上手いし素晴らしい。

いつも受身で他人に引っ張られた桐島はやりたい事を見つけ逆に遠藤の手を引っ張って行く。
この手の演出も素晴らしい。
そう、説明しなくても観れば分かるのだ。

ボーナストラック。
原作のオープニングが好きなんで抜粋。

濃い海の上に広がる空や
制服や 幼い私達たちの一生懸命な不器用さや
あの頃のそれ等が
もし色を持っていたとしたら
それはとても深い青色だったと思う。
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