ShinMakita

寒い国から帰ったスパイのShinMakitaのネタバレレビュー・内容・結末

寒い国から帰ったスパイ(1965年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

*SPY×FAMILY 第2期放送記念:東西冷戦映画特集



〈story〉
冷戦下のドイツ、西ベルリン。米軍検問所〈チェックポイントチャーリー〉に佇む英国諜報部員アレック・リーマスは、東からやってくるリーメックという男を待っていた。リーメックは、リーマスが運営していた東ドイツ政府所属の情報提供者。偽造パスポートで検問を通過し、西側で保護される段取りになっていたのだ。しかし姿を現したリーメックは東側で偽装がバレて、リーマスの眼前で射殺されてしまう。これは東独諜報部のスパイハンター、ムントの仕業であった。過去に何度も、リーマスはムントにスパイを始末されており、いわば宿敵という存在だった。
その後ロンドンに呼び戻されたリーマスは、諜報部の長〈コントロール〉から財務部への配置換えを宣告される。冷戦の最前線で長く働き過ぎ、燃え尽きたリーマスへの配慮だったが、リーメックを失ったことによる懲罰人事としか思えない。リーマスはしばらく財務部に籍を置くと、諜報部を退職してしまうのだった。

スパイを辞めたリーマスの人生は暗く苦いものだった。職安に通うも仕事はなく、酒に逃避する日々が続く。やっとのことで薄給の図書館員という職を得るが、酒浸りからは抜け出せず、ツケを断った雑貨屋で喧嘩騒ぎを起こして逮捕されてしまう。釈放されると、恋人のナンが待っていてはくれていたが、職は無くなり、まさに絶望のドン底に叩き落とされるのだった。
しかし、そんな彼を拾ってくれる者がいた。前科者支援団体のアッシュという男だ。アッシュはリーマスに、顧客のカールトンを紹介。カールトンは、ハーグに飛んで「ベルリン時代の経験を話す」だけで大金を支払うと持ちかけてきた。リーマスは、この流れは〈東側からの誘い〉だと感づいた。東独諜報部は、組織を追われクサッている元英国スパイをリクルートして情報を得ようとしているのだと。リーマスは誘いに乗ってハーグへ飛び、東独諜報部のナンバー2、フィードラーの直接尋問を受け、東ベルリンへと連れていかれることとなった。リーマスが、財務部時代に「転がる石」と呼ばれる業務に従事していたと話すと、フィードラーは目を輝かせる。転がる石とは、英国に協力する大物スパイに海外口座を経由して報酬を支払う作戦だった。フィードラーは、その大物スパイこそがライバルのムントであると疑っていた。リーマスを東に連れていき証言させれば、ムントを失脚させることができると、フィードラーは確信したのだ。

こうして、リーマスは東ドイツ政府の聴聞会に出席することとなり、ムントを裁く場で証言することになる。祖国を裏切り東側に情報を与えることで暗い表情のリーマスだが、内心では勝利を確信していた。実は、リーマスが諜報部を辞めて酒浸りになったのは〈コントロール〉とその部下スマイリーが立案した偽装だった。接近してきたフィードラーに偽情報を与えることでムントを始末するという欺瞞作戦だったのである。東ドイツ上層部は彼の証言からムント有罪の判決を下しかかるが、そこで予想外の展開が起きてしまう…


「寒い国から帰ったスパイ」


…組織や国家の利益は、一個人の思いや命よりも優先される。その非情な論理をテーマに傑作を発表し続けるル・カレの代表作を映画化した作品。
検問所の濡れた石畳、ラストの壁。ビジュアル的にも切なさ満点。スコアも雰囲気たっぷりでした。姉妹編の「裏切りのサーカス」と併せて観ると、より楽しめます。オススメ中のオススメ!
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