シカク

ブルーベルベットのシカクのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
3.8
陽が明るく降り注ぐ中、ジェフリーの父は庭に水撒き中、急に倒れてその傍の草むらの中に蠢く虫のアップ。そして、その直後に倒れた父が搬送された病院に赴く、息子のジェフリーはまたしても草むらに向いた視線の先に、人の耳を見つける。この共通する普段気に留めることのなさそうな足下の草むらに、途中にサンディが言っていた夢の中で闇が広がっていて愛の象徴であるコマドリが光を持ってきてくれるのという言葉と最後のコマドリから、[蠢く虫=闇]、さらに不自然に映し出されるカーテンとドロシーの家のクローゼットや無線などの、隔てたり隠さすものを介して内側に入り込み、覗き見や盗み聞きをする好奇心のメタファーとして[耳]が不穏に紛れている。

抽象的なシーンやカット、不安や胸のざわめきを掻き立てる演出や展開はデヴィッド・リンチのお家芸。
意味がなさそうで実はあって、でも全て謎を紐解かせないギリギリの所で再度考察させ、多角的に想像を膨らませるのが流石だと唸らせられた。
シカク

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