くろきつ

ブルーベルベットのくろきつのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
4.8
好奇心からある殺人事件の独自調査を始めた青年が悪夢のような世界に引きずり込まれていく姿を描いたクライムサスペンス。

「砂の惑星」で散々たる評価を受けて映画監督としての名声が薄れていたデヴィッド・リンチがファイナルカット権を自身が持つという条件のもと作り上げた問題作。結果はその年に最も興行収入が高い映画となった。カルト的人気を誇る今作が私のデヴィッド・リンチデビュー作となった。今までのリンチ映画はどうしても難解なような気がして観たいと思っても距離を置いていたが予告を見てついに決心がつきこの映画を観た。感想はなんでもっと早く決心しなかったんだと自分を責めるほど自分好みの映画だった。当時はその暴力的な描写から評価があまりよろしくなかったようだけれど口コミなどから広がり前述の結果になったらしい。ものすごく暴力的でハイセンス。一種のアトラクションだった。観客は主人公と共に堕ちて、主人公と共に正常な日々に戻ってくる。地獄巡りをした気分だった。デニス・ホッパー演じる最狂の男、フランクは登場するたびに全身がゾクゾクした。恐怖を感じる間のないほどの嫌悪感が全身を駆け抜けた。逆に笑っちゃうくらいのイカれぶり。そんな彼も興奮するほど魅力的なキャラクターなのだが、私がいちばん魅力を感じたのは堕ちていく主人公のジェフリー。彼の常にどこか肝が据わっている危うさに惹き付けられた。最近の韓国ノワールなどの堕ちるとこまで堕ちて破滅する物語もすごく好きだが、やはり堕ちたらちゃんと戻ってきたい。
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