OMIYAKOHEI

ブルーベルベットのOMIYAKOHEIのネタバレレビュー・内容・結末

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ピュアで未熟で牧歌的な青年(ジェフリー)が大人の世界に足を踏み入れる。状況も知らず無遠慮に歩き回る彼の姿は『アフターアワーズ』の主人公を連想させるが、すぐに痛い目に遭うだろうというこちらの予想に反してジェフリーは最後まで生き延びる。事件を解決に導いたという勝手な自負からか、その表情に充足感を浮かべるシーンがあるが、自身の無遠慮な振る舞いの結果としてドロシーの夫(ドン)が死に至ったことについて彼が想いを馳せる様子は一度も表現されない。平凡な中産階級田舎娘であるサンディと共に過ごすシーンで流れるのは甘くメロウなBGM。そこがドロシーの生きる『ブルーベルベット』な世界とは別物であることをハッキリと表現しているのであろうが、あまりにも白々しい音楽であるため同様のシーンに出会うたび笑ってしまう。このシニカルなユーモア観は僕の好物で、また、多く出会うことのできるタイプのものではないからだろうか、ディレクターに対して親しみを感じてしまう。ドロシーやフランクの複雑で特殊な人間性は、最後まで底が割れず、作品に深い奥行きを与えている。世界観を混ぜ合わせる絶妙な塩梅がこの作品の総体的な印象を非常にユニークなものにしているように思う。
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