幻想的・悪夢的でありながら、人間の核心を突いてくるリンチワールド炸裂
ベルベットブルーのオペラカーテンをバックに流れるオープニングクレジットから心掴まれる。
そこからの絵に描いたような平和な住宅街の光景、不慮の事故、その下で蠢く甲虫、の流れが作品の意図を示していてわかりやすい。
加虐と被虐。
庇護欲と支配欲。
地獄を知る女性と夢見がちな女性。
相反しているようで熱量は同等。
デニス・ホッパー演じるフランクは記憶に残る悪役。
性的嗜好も然ることながら、唄うドロシーに涙する気持ち悪さよ。子供が好きだからとか動物に優しいからといって"いい人間"と判断できないように、美しいものに感動することが善人の証明ではない。
どの登場人物にも大なり小なり嫌悪感を抱くが、そういえば私を含め人間は誰しも気持ち悪いし変態だし異常なんだった。
『マルホランド・ドライブ』はオールタイムベスト10内に入るくらい大好きで、この作品も超難解映画なのかと身構えてたんだけど、予想に反してストレートな運びのままエンドロールへ。
ハイウェイの写し方や口パク熱唱等、後の作品を彷彿とさせるシーンもあり楽しかった。