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流れるのUCOCOのレビュー・感想・評価

流れる(1956年製作の映画)
4.1
田中絹代に、高峰秀子、山田五十鈴もいるしそれを成瀬巳喜男が〆るんだからこりゃ見るしかないだろ!!杉村春子と岡田茉莉子がいるのも激アツだ。。。
配信でもなかなか見れないし、加えて日本にもう一本しか残ってないフィルムでの上映なんて、、久しぶりに興奮しながら日本映画を観た。興奮しながら冒頭であんなに綺麗な海面をモノクロで見せられて期待が高まる。

そして結論、おもしろい。裏切られることは一切なかった。

いなぁ、これを「ジェンダー・ギャップ映画祭」でやりたかったなぁ。と切に思いましたね。

金銭的に困っている名高いらしい芸者部屋の女将、山田五十鈴の周囲を取り囲む女たちがみんな魅力的。
あの田中絹代様が女中って設定には奥ゆかしすぎて無理があるだろ、、と思いつつではあったものの見続けていたらその違和感は気づいた時には消えていた。

この作品に登場するのはほぼ女性(女社会)で、男性も出てはくるんだけど彼らは迷惑な厄介者か或いは女性のためにお金を工面してくれるだけの道具みたいなもの。
とにかく女性たちがみんな自立しているし、例え自立していなかったとしても例えば高峰秀子は自立するために行動を起こし、芸者の仕事もまともにせずに子供と共に山田五十鈴の元に転がり込んでいる女は惨めな身として描かれる。
ところが、それなのにこの映画の最後では実はもうその芸者部屋が立退を余儀なくされることが決まっていて(決めたのも女性ではあるが)その事実を知るのは田中絹代のみ。
結局女たちでどれだけ奮闘して、もがこうと社会はそう女たちに対して甘くない。
金銭を工面するためには女はやはり身体を売るしかないのだろうか。ここに、映画史で何度も描かれてきた疑問が一つ浮かび上がるのである。山田五十鈴、『浪華悲歌』から時が経っても訴え続ける女性の無情さ。

『流れる』秀作だなあ。
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