オリ

お茶漬の味のオリのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.3
階級が違うと生き方が全く異なる。
いいところのお嬢さんだった妙子と、
田舎の冴えない茂吉の中年夫婦。

三等車、安煙草、猫飯。
茂吉が好むものの何から何までが
鈍感で嫌だと妙子は感じる。

育ちが違うから合わない、嫌だと思ってきたが、親友からは、あんたは自分の思い通りにならないと気がすまない性分だけど、離婚しないところからすれば、何だかんだ相手を好いているのだと指摘されてもピンとこない。その後もその言葉に反抗するように好き勝手やってみたけど、茂吉がウルグアイに発ったあとの家はなにか物哀しい。

《インティメートな、プリミティブな、遠慮や体裁のない、もっと楽な気安さ》
これがいいのだと茂吉は以前言っていた。
妙子はこのことの意味にようやく気づく。

茂吉の鈍感さとは、嫁が嘘ついて旅行に行っていることに気づかないことではなく、わざわざ口を出さないこと、実はこのようにどっしり構えて、妙子の自由を支えているところ、
家では亀の甲羅を乾かしているだけで何を考えているのかさっぱりわからないようだけど、仕事ではしっかりウルグアイ出張を任されるところ。家を気の置けない場所としているところ。

茂吉《お茶漬けだよ、お茶漬けの味なんだよ。夫婦はこのお茶漬けの味なんだよ》

他人同士がともに住み合う「家族」を営むためには、こうした《気安さ》が必要なのだ。
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