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ローザ・ルクセンブルグのオリのレビュー・感想・評価

ローザ・ルクセンブルグ(1985年製作の映画)
3.8
 ローザは一人の人間であることと革命家であることを両立させようとする。また、暴力ではなく言論において、いずれ来たるべき革命を導こうとする。まずは選挙において大衆の意志を確認し、議会で多数派を形成するとともに、大衆自身が豊かに生きることとはどのようなことであるかを理解する必要があるとする。これが社会民主主義の路線。そして、他者への信頼と忍耐力を必要とするローザの哲学。
 
 19世紀後半とは違い、20世紀は帝国主義の時代であって、第1次世界大戦が目の前に迫っている。それまでは、一国での革命ではなく、多国で一斉に革命が起こることによって、社会の変革が進む、と考えられていた(「万国の労働者よ、団結せよ」)が、国際的な労働者運動より、自分の住む国が亡くなるかもしれないと恐れ我が国を守るために戦争へと進むナショナリズムを重要なものと考えるようになる(「ただし戦時は仲間も敵となる」)。

 揺れる水面。本作はこう終わらざるを得ない。解決などない。しかし、今。その後、世界で何が起こったかを知っている。だから、現代においてソ連のレーニンやスターリンを批判するために、あるいはトロツキーを批判するために、あるいは、既成左翼を批判するために、ローザが召喚されてしまう。一人の人間としてではなく、偶像化された殉教者として。
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