二回目だけどまあ絶品。一回目観た時はいけすかないマダム感爆裂だった木暮実千代は､この前観た溝口の『赤線地帯』では別人の慈愛感で演じ分けの上手さに唖然。小津演出ありきとはいえ､ほんとに役者全員が杉咲花って感じのそのもの感。「ちょいと」が世界一似合う淡島千景はたまらん感。『七人の侍』では微妙にイラっとする津島恵子も可憐の塊。チャラい鶴田浩二。けどこれも演技ってこと。笠智衆はここでも絶妙のど自慢。この時代にこの旦那様像を見せる佐分利信も立派。でラスト前の静かな静かな二人だけのお台所大団円。からの二人お茶漬けで至福の涙もらい泣き。噛み合わない夫婦がついに噛み合うこの至福感。けどそこに至るまでの静かな怖さ。なんてまあ絶妙演出。嘘はついてもゲスい浮気の影も感じないこの時代。いや時代じゃなくそういう小津の品ってことか。けどやっぱりゲスい時代になってしまったと思わされる品ある映画。
