SnL

ダンサー・イン・ザ・ダークのSnLのレビュー・感想・評価

3.5
作中絶え間なく不安が煽られ、本当に何の躊躇もなく、それも次から次へと、物事が理不尽で悪い方向へと向かっていくので、通常の映画であればややもすれば脚本に過剰な印象を受けて鼻白んでいたはず。

でも揺れ続ける手持ちカメラを通して見ていると、あっという間に絶望的な状況に追い込まれていくセルマの姿に、妙なリアリティが感じられる。こちらがセルマのすぐ近くで顛末を目撃しているような感覚を引き起こし、それでいてあくまでカメラとして一定の距離を保ち続ける。普段映画を見る時に立たされているのとは違う視点を体験することができた。
ミュージカルを現実と空想をつなぐ回路として心の拠り所とする白痴を演じたビョークも、この人を置いて他にはなかったろうと思わされる適役ぶり。

セルマの選択の是非は問われるべきだと思うし、ラストもあまり腑に落ちなかったのだけど、それでも人があれだけ生き生きと歌い踊る人が1人死ぬということを、見たら2度と忘れられない形で丁寧に撮ってると思う。
SnL

SnL