近本光司

しとやかな獣の近本光司のレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
2.5
父(伊藤雄之助)がベランダに出て、東京湾の埋め立て地に連なる工場のほうに向けた望遠鏡を覗く。するとショットが切り替わって、同じ時間にシャワーを浴びている娘(浜田ゆう子)の裸体が映る。まるで父が娘の浴室を覗き見していると一瞬錯覚させられてしまう気味の悪い、驚くべきショットの繋ぎ。これについてはクレモン・ロジェも言及していた。しかし新藤兼人が書き、川島雄三が演出をつけた密室劇のダイアログのもつテンポがどうにも肌に合わないのである。ポランスキーの『おとなのけんか』を見直したくなる。気を衒った構図のつくりかたは庵野秀明と一緒だ。川島雄三のモダニズムは古くさいコメディで発揮されるほうがいいなあ。『喜劇とんかつ一代』とか。