コータ

しとやかな獣のコータのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
4.5
ゆすり一家としたたかな悪女を囲んだ喜劇的小品。
ポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』は本作の現代版だといえる。


団地の一室を舞台に見立てた、舞台劇的ワンシチュエーション・コメディ。
細かく丁寧な演出、撮影や構図決めの工夫、美術造形の精巧さが随所で光る。

川島雄三監督の特徴である、「現代への鋭利な観察眼」と「カラッとしたユーモア」が炸裂している本作。
名匠の手腕が分かりやすく発揮されるのは、こういったワンシチュエーション映画でこそ。シドニー・ルメットの『十二人の怒れる男たち』やヒッチコックの『裏窓』もまた然り。
世界の名匠たちの作品群に勝るとも劣らない、川島雄三監督によるワンシチュエーションの名作である。


貧乏が身体の髄まで染み込んできたかつての暮らし。そこから抜け出そうとした末の、あぶく銭を稼ぐインモラルな生活が、60年代日本の高度成長の実態なのだとしたら…?

このブラックユーモアに富んだストーリーを見事に演じたのは名優たちばかり。
しとやかな後家の若尾文子。妖艶な見た目とは裏腹な、したたかな悪女であった。
飄々とした父を演じた伊藤雄之助、母役の山岡久乃の夫婦2人はこの映画の出来上がりを支えていた。


「開け放しの玄関」のナゾ。
本作を通じて開け放しにされることの多い玄関の扉。あれは何かのメタファーなのか…?
それとも昔は平気で玄関を開け放しにしていた、とか?
コータ

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