似太郎

疵の似太郎のレビュー・感想・評価

(1988年製作の映画)
4.0
【戦後のメタファー】

梶間俊一監督作だと『ちょうちん』(『竜二』の亜流)が有名だが、同じ陣内孝則主演作では本作もなかなかの良作。戦後どさくさを生きる男と女の絆や、家族愛、主人公花形敬のヤクザとしての矜持をフレッシュに描破した一編である。

加藤泰の『男の顔は履歴書』にも通じる戦後社会をネチョネチョ生きる男の不様な生涯をリリシズム豊かに綴った作品で、とにかく主演の陣内孝則(ex.ザ・ロッカーズ)が喧嘩っ早いが人情味のあるヤクザを快演していて全く飽きさせない。

こういう叙情的な雰囲気のアウトローシネマだったら何杯もイケる。最近のアメリカのマーヴェルやディズニーなんて全部クソ!。日本映画の力はハリウッドなんかよりも遥かに凄いのだ。

この監督の中では『悪女かまきり』『略奪愛』『集団左遷』と並ぶ代表作の一つ。東映ニューウェーブの最盛期の一本として観るに値する「男の生き様・死に様」を哀愁漂う映像美で描く隠れた逸品だ。😎
似太郎

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