とうじ

バスキアのとうじのレビュー・感想・評価

バスキア(1996年製作の映画)
3.5
バスキアは、中学生の頃彼の作品のtシャツを持っていたので、なんとなく親近感が湧く。あと、ニューヨーク近代美術館で彼の作品を見たのもうっすら覚えてる(でも、あそこはビデオゲームとアートを融合したゲーセンみたいな階が正直一番楽しく、弟と一緒によくそこで遊んでた。)。

本作はすごく堅い作りになっており、隙がない。その隙のなさが、逆にスタイルの凡庸さを露呈させてしまっている感じがする。ジャンプカットの多様、mv的映像のマッシュアップ、など、今見ると少々古臭い。しかし、見事に真面目なバイオグラフィになっているのは事実である。今読んでるトーマス・ベルンハルトの小説に、「たいていの芸術家は自分の芸術のことを知っていない」という一節が出てくるのだが、画商に発掘されるまでただのホームレス青年だったバスキアも、そのような自らの無知に困惑させられながら、芸術家としての自分をいまいち等身大に受け入れることができず、苦労する。
芸術作品の素晴らしさの根底には、結局言語や理論を超えた、何か超越的な力があり、それは解読を試みずとも、見る人に差し迫ってくるものである。その不条理さが、ヘロインが中毒患者の骨からカルシウムを奪っていくように、バスキアの創作意欲を脆く、弱く、虚ろなものへと変貌させていく。
実際ヘロインのodで亡くなったバスキアだが、彼に対するリスペクトが感じられるのが良い。「エグジットスルーザギフトショップ」みたいな爽快で嘲笑的なアート批判にならないところに、監督の真摯さが感じられる。
シェルターでラジオのジャズ放送が流れる中、バスキアが色々作品を作るモンタージュがめちゃくちゃかっこいい。
あと、小便色のくたびれたワンピースを着て、ショッキングピンクのスカーフを巻いたコートニーラブが、ストーンズの「beast of burden」が気だるくかかるのに乗せてニューヨークの路地裏から登場するシーンも、なかなか印象に残る。存在の圧が凄い。
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