matchypotter

男はつらいよ 寅次郎と殿様のmatchypotterのレビュー・感想・評価

4.1
今月3本。このペースなら今年中にゴールできるけどどうなることやら。これに限っては焦らず行こう。

『男はつらいよ』シリーズ、第19作目。
これ、好き。今まで観てきた中でも結構名作だと思う。

時代劇。今回の寸劇は時代劇。いきなりさくらちゃんが「お兄ちゃん」となる展開でなんかちょっと適当。それがなんかまた良い。

「いいんだよ、いいんだよ、怒ってるわけじゃないんだよ」

と言いながら怒ってる寅さん。
意気揚々と半年ぶりに帰ってきて気前良くミツオに手のひらサイズの鯉のぼりのおもちゃ。
それに満足する寅さんの最後の庭で、どデカい鯉のぼりが、、、。
それをヒタ隠そうとする団子屋連中。バレて寅さん拗ねる。

ほとぼりが冷めていざ晩飯。団子屋連中、寅さんのご機嫌取ろうとご馳走の準備。
そこに少し前から迷い込み飼い始めた犬がウロウロ。その犬の名前が“トラ”。

「おい、トラ、あっちにいってなさい!」
「おい、トラ、庭にク◯するなって何回言えばわかるんだ!」
「おい、トラ!」「おい、トラ!」

、、、寅さん、ついに堪忍袋の尾が切れる。
どうしてこんなに畳み掛けてくるのか。どうしてこんなに降り注ぐのか。面白すぎる。
そして、面白過ぎて、寅さん、はたまたご馳走食わずに飛び出す。どこまで勿体無い男なのか。

今回の寸劇が時代劇だったことがそこでわかる。
飛び出した先の四国、伊予。
まさかの伊予5万石の城主、に相当する現代の“殿様”と関係ができる。

まさに格式高く、古風で、由緒正しい殿方。
寅さんとは正反対。これが今回の作品。

日本の良き伝統が少し浮いてしまう民主主義の世間で、世間知らずだが伝統、格式、礼儀を重んじる“殿様”と、そうは言ってもそれがうまく順応できるわけではない自由と民主主義の日本の中で、板挟みに遭いながら今日も日が暮れる、そんな話。

地元では要人の“殿様”にお金拾ってもらった礼にラムネ奢ったら、お返しに豪邸でおもてなし。

“殿様”、勘当していた息子が亡くなり、最後を過ごした息子の妻に会いたがる。東京にいるらしい。
寅さん、いつもの安請け合い。「いいよ、いいよ、3日もあれば探せるよ。」

そんなわけはない。
安請け合いも忘れて団子屋に帰ってみると、、、“殿様”直々に催促。

とんでもない人物と、とんでもない“約束”をしてしまった寅さん、ガッツリ本人の催促と監視の元、、、途方に暮れる。
これ以上ない途方に暮れる。捜してみようかと思えば捜し方もわからず手当たり次第。とはいえ、寅さんにも限界がある。

「頑張って、探すか!、、、、“みんな”で」

団子屋連中、てんやわんや、、、かと思いきや、奇跡が起きる。

今回は奇跡が1度ならず、2度起きる。
2度起きるが、この展開がものすごく寅さんらしい。

どれだけ身分の違う人が現れようが、どれだけ奇跡が起きようが、あれやこれやと難題降ってこようが、色んな人がとっかえひっかえ団子屋にやってきて好き勝手なことを行って去ろうが、この“らしさ”。

寅さん“らしさ”、団子屋“らしさ”。このブレない日常と寅さんの喧騒。

ぐいぐい手繰り寄せる“持ってる”寅さん。そこから調子に乗る寅さん。本当に夢叶いそうなところまで行く寅さん。
だけども、叶わない、いや、叶えないことで収まることを良しとして最後は我を貫かずに、穏便に相手の幸せこそ幸せだと言い聞かせて旅に出る寅さん。

この最後のシーンの様相。
最初の伊予でのシーンの様相との違いに本当にあったかくなる。

いつもいつも結局何も得ていないようで、団子屋にも、相手にも、そして、寅さんに関わったすべての関係者に爪痕を残す寅さんの日がまた暮れる。

真野響子、健康的で吉永小百合系の日本の美が滲み出てて、この作品の雰囲気とのフィット感が良い。

最後の団子屋での“2つの約束”を真野響子に問い詰められる寅さんとさくらちゃんのやりとりがとても印象的。
寅さんの相手を思いやるがための歯切れの悪い返しと、それをそれとなく伝えつつもお兄ちゃんを思いやるがための歯切れの悪いさくらちゃん。

本当に素敵な兄弟。
今日もとても幸せな気持ちになれた。このシリーズが観れる世の中である以上、日本が、柴又が好きだ。

ちょっと今度、行こうかな、葛飾柴又、帝釈天。


F:1972
M:1588
matchypotter

matchypotter