トランティニャン

インサイド・マンのトランティニャンのレビュー・感想・評価

インサイド・マン(2006年製作の映画)
3.5
スパイク・リーが娯楽に徹した本作 。確かに言われなければスパイク・リーが撮ったとは分からないほど、異色のクライムムービーとして面白かった。

まず強盗―被害者という対立項を無効化し、血を流さずに完全犯罪を成し遂げてしまおうという発想に驚く。さらにデンゼル・ワシントンの新境地とも言える、エディ・マーフィばりに陽気な典型的黒人という造形、ジョディ・フォスターやウィレム・デフォーとの絡みもよかった。

そしてさり気無く挟まれる、暴力ゲームや戦争犯罪、人種間の差別意識や軋轢。オチと絡むので詳述しませんが、スパイク・リーはそういった9・11後の軋みのようなものを、あの「記号の無効化」に託したんじゃないかと勘繰りたくなるくらい。そういう意味でやっぱりスパイク・リーらしい作品。ただ前作『25時』が余りにも素晴らしかったのでこの評価。