【エンタメに徹した快作】
エンタメとして良くできています。娯楽であることに徹しているという点で、高く評価すべきでしょう。
怪人二十面相と明智探偵という、うれしくなっちゃうくらい大時代的なお話を、第二次大戦を回避した格差社会・日本というこれまた架空ながらどことなく懐かしい設定が支えています。日本語が横書きの時に右から左にというところ、そしてその日本語の下に付いている横文字がみなドイツ語であるというところも(ドイツ語の実用性は20世紀前半はかなり高かった)なかなか効果的です。
配役もいいと思う。ただ私の好みでいうと、松たか子は悪くないけど、もう少し若い女優を使ってほしい。むかしの華族の令嬢は早ければ十代で、遅くとも二十代前半でお嫁に行ったはず。松たか子の味を持った若い女優を発掘する努力をしてもらいたかったところです。『四月物語』の頃の彼女は初々しかったけれど、今はやはり三十歳の女優という感じがしますので。
既存の映画作品を思わせるところがところどころに見られます。パクリというより、敬意をこめた借用と見るべきなのでしょうね。
なお、映画のなかの日本が「格差社会」と言われていますが、「格差」はやはり最近の流行語で、華族が幅を利かせている社会なら「階級社会」とはっきり言った方がいいのでは。