タナカリオ

蜘蛛巣城のタナカリオのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
3.9
たった2、3点未来のことを知っただけで、武時は疑惑の心を持ち続け、最後には見えない糸に絡まり蜘蛛の巣にかかった獲物のように、味方から放たれた矢に絡まり捉えられていくー…

『羅生門』で人間のエゴイズムが描かれたように、蜘蛛巣城を舞台に、人間の内面の疑惑からくる心の弱さが描かれていて面白い。

そしてこれは何より黒澤映画!
冒頭の蜘蛛巣城がふっと現れるシーンはスモークを上手く使い奥行きさと広がりを出し、不気味さや幻想さを感じさせる。
武時の演技をアップではなく全身で見せることにより能を取り入れた動きが画面上に武時の弱さと共に映し出される。
感情が動けば風が吹く!疑惑と共に霧が漂う!構図のダイナミックさ!七人の侍を観た時の感動が思い出されるよう。
最後の矢を浴びる三船敏郎の目の演技の凄いこと。「殺す気か!!」という言葉が聞こえてくるようです!この三船敏郎を観るだけでも観る価値のある作品です。
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