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蔵の中の708のネタバレレビュー・内容・結末

蔵の中(1981年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

U-NEXTで配信しているのを見かけて、思わず鑑賞。ずっと気になってた作品です。1981年の公開当時、同時上映は金田一耕助シリーズの「悪霊島」でした。この頃の角川春樹マターによる角川映画のダークで耽美なトーン、本当に好きなんです。

横溝正史が原作。磯貝という編集者の元へ、蕗谷笛二という少年が持ち込んだ「蔵の中」という原稿には、結核で蔵の中に隔離された姉と世話をする弟のただならぬ近親相姦的な関係や、蔵から笛二が望遠鏡で観察している遠くの中年男女の情事がこと細かく綴られていたものの、読んでいくうちに、その中年男女が磯貝と愛人のことだと気づき、磯貝は急いで笛二の自宅へ。蔵の中を確認すると、笛二ひとりで姉は彼の創造物だった…というオチ。要は、覗き趣味の引きこもり少年による妄想だったということです。覗きってホント、淫靡。

妄想の姉役で松原留美子というキャスティングが絶妙です。松原留美子はまだLGBTQみたいなセンシティヴな細分化がなかった時代に、ニューハーフという触れ込みで売り出されたタレント。まだ女を知らない笛二の妄想の産物としてかなりマッチングしていたと思います。

ただし、松原留美子と笛二役の役者さんの演技がとにかく酷い。まぁ、松原留美子は終始無言なので、存在感だけで押し切った部分はあるかと思いますが、笛二役の役者さんの棒読みがねぇ。それと対をなすかのように、中尾彬と吉行和子の濃密な演技が素晴らしいです。さすがです。それでなんとかこの作品のバランスが取れてるように感じました。ちなみにこの当時、中尾彬は39歳で吉行和子は46歳だったそう。おふたりとも色艶がありますよね。
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