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新しき土のmのネタバレレビュー・内容・結末

新しき土(1937年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

貧弱すぎる大学図書館のラインナップの中で貴重だといえる作品の一つだったから、卒業記念に観た。

本作を手掛けたのは、『聖山』『死の銀嶺』等「山岳映画」のジャンルを得意としたアーノルド・ファンク。物語終盤、原節子16歳が投身自殺を試みようとする際の、火山の噴火シーンはやはり目を見張るものがある。

しかし、本作は満洲国プロパガンダ・国策映画かつエキゾチズムに満ちた内容であるが故、「歴史資料以上の価値はない」といった類のクリシェを避けられないのもよくわかる。では、本作が取るに足りない作品であるかといえば、そのような事は断じてない。もちろん、『國民の創生』のようにイデオロギーの域を超えて映画史上に残るほどのインパクトを残したというわけでもない。

まず注目すべき事実として、本作には円谷英二が撮影協力として参加しており、ここで日本初の本格的なスクリーン・プロセス撮影が実用化されている事を挙げたい。例えば、小杉勇が山道を車で走行する場面、分かりやすいものは、地震によって倒壊する民家だろう。今こうした事実だけを挙げたところで、やはり本作に歴史資料以上の価値はないと言われかねないので、端的に申し上げると、原節子16歳の魅力(この点に反論するものはまずいないのではか)を最大限に引き出しているものは、まさに特撮技術である。それは、原節子16歳が桜並木を歩くシーンに現れている。あまりに不自然な遠近感の中を漂う原節子16歳の幻影。ここでは、反イリュージョニズム的手法が、かえって彼女の魅力をいやというほど強調している。大林宣彦に近いものを感じた(両者とも処女性を強調しすぎているが、)。まぁ好き嫌いはさて置き、この場面における映像表現は、現代の観客からしてみても、崩壊する民家のミニチュア感に比べれば、幾分かフレッシュに映るはずだ。


またあとで
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