福福吉吉

ザ・セルの福福吉吉のレビュー・感想・評価

ザ・セル(2000年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
心理学者のキャサリンは最先端の技術で対象者の精神世界に入り込む実験を続けていた。ある日、キャサリンはFBIから連続殺人犯の精神世界に入り、拉致された被害者の監禁場所を探すよう依頼される。

◆感想◆
精神世界に入り込んで相手の深層心理に語り掛けるという特殊なストーリーを独自の映像で新鮮な驚きを与える作品になっており、様々に変化する精神世界の中でキャサリンが命の危険に晒されながら、相手と交渉するスリリングな展開が描かれていました。

ストーリーのテンポは良く、最初に小児患者での実験が上手くいかない様子を描くことで、次の連続殺人犯での実験が非常に困難であることを提示し、観ている側に結果への興味を惹きたたさせるように構成されていて、上手い描き方だと思いました。

キャサリン(ジェニファー・ロペス)は若い心理学者で対象者の精神世界へ入り込む実験で少年の意識を取り戻そうとする先鋭的で熱意のある人物として描かれており、好感の持てるキャラクターになっていました。彼女の精神世界での行動は相手を思いやる部分が多く出ていますが、終盤では勇敢さが出てきて彼女の変化がとても面白くて良かったと思います。

連続殺人犯のカール(ヴィンセント・ドノフリオ)はその犯行の異常さで観ている側に嫌悪感と恐怖を抱かさせるキャラクターとなっています。しかし、彼は分裂症を患っており、彼の中で少年の部分と凶悪な部分が描かれることで、ただ異常なだけでない複雑さを感じるようになっていました。

FBI捜査官のピーター(ヴィンス・ヴォーン)は拉致された被害者がまだ生存することを知り、被害者を助けるためにキャサリンに依頼することになります。彼は被害者を救いたい一心で行動するため、キャサリンに無理強いしている感じが否めませんでしたが、ストーリー後半では自らも犯人であるカールの精神世界に入り込む行動に出ており、彼の熱意の強さを感じさせてくれました。キャサリンが精神世界の主人公であるようにピーターは現実世界で事件を解決する主人公であったように思います。

本作の見どころである精神世界の映像は千変万化で、美しいところもあれば、陰湿で不気味なところもあってと、対象者の精神の複雑さを上手く描いており、抽象的な世界の面白さがありました。

精神世界の多彩な変化と事件を追う緊迫した展開が上手く絡み合って面白い作品でした。

鑑賞日:2023年12月6日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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