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必死剣 鳥刺しの福福吉吉のレビュー・感想・評価

必死剣 鳥刺し(2010年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
江戸時代、東北の海坂藩では藩主の側室の連子が藩政に口を出し、藩政は悪化の一途であった。そんな中、妻を亡くした藩士の兼見三左エ門は独断で連子を刺殺する。命を失う覚悟をしていた三左エ門に中老の津田から意外な処分を申し渡される。

◆感想◆
ストーリーの軸として、海坂藩の内部を悪化させた連子の振る舞いとそれにより影響を受けた人々の姿があり、その部分からストーリー終盤にかけて、三左エ門に隠された真実が明らかになっていきます。登場人物は多いですが、覚えるべき人物は少なくてそれぞれ個性的なので理解しやすいと思います。

兼見三左エ門(豊川悦司)は妻を亡くしたばかりで、死に場所を探しており、ずっと藩を苦しめていた連子の殺害に至ったものと考えられます。連子(関めぐみ)も悪いのですが、言いなりになっていた藩主(村上淳)の方が悪い気がしました。この部分は時代劇だけに藩主には逆らえなかったのだと考えますが、その藩主に従わされる部下がとてもかわいそうです。

三左エ門は殺害後、軽い処分で生き残りますが、それが非常に生きづらそうで不憫に感じました。そんな中、妻の姪の里尾(池脇千鶴)が三左エ門を支えており、彼女の三左エ門に対する愛情の深さを感じました。

一方、連子による悪政に怒っていた帯屋隼人正(吉川晃司)は何度も藩主へ申し入れをしており、藩内の農民たちの気持ちを考える優れた人物として描かれていました。時代劇でも吉川晃司はカッコ良いです。藩主の従弟にあたり、隼人正が藩主なら良かったのに、と思わせる人物でした。

本作の剣劇は終盤のみですが、この部分の三左エ門の尋常ならざる表情や振る舞いは観ていて心に響くものがありました。とてもスタイリッシュなものとは言えないですが、魂のこもるアクションだったと思います。

本作中の雰囲気が暗くて気持ちの晴れない作品ではありましたが、なかなか面白かったと思います。

鑑賞日:2024年3月30日
鑑賞方法:CS WOWOWプラス
(録画日:2023年4月9日)
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