キミシマユウキ

東のエデン 劇場版 II Paradise Lostのキミシマユウキのレビュー・感想・評価

3.6
あなたは突然100億円の電子マネーが入った携帯電話を渡され、
「それを自由に使ってこの日本をより良いものにする救世主となってください」
と言われたらどうする???

そんな知的で魅力の詰まった題材を扱ったサスペンスアニメ
「東のエデン」全11話 + 劇場版Ⅰ&Ⅱ
のレビュー。
監督は「攻殻機動隊S.A.C」シリーズの神山健治氏
世界観なども攻殻機動隊シリーズと共通している設定がありそちらのファンはニヤニヤできる

洋画ファンが多いアプリでアニメのレビューはあまり読まれないことが多いが、個人的に日本のアニメは、邦画では制作委員会の関係でやってくれないような攻めた作品や凝りに凝った作風、こだわりの強いものが多くて結構好きなのだ。自分の中で
洋画>>日本アニメ>>>>>>>邦画
くらいには邦画の、特に大作メジャー系の映画には希望を持ってない(笑)

さてこの作品は友人のオススメで鑑賞したのだが、面白い!!
現代社会に潜む政治経済への問題提起、主にニート対策や諸外国への日本の態度などなど、フィクションとはいえ他人事とは思えないリアルな描写は大人でも楽しめるようになっている。
さらに主人公が映画に精通している設定なので映画ファンの皆様なら
「あぁ!!このシーンはあの映画のオマージュ!!」
「あぁ!この地球儀は!アルパチーノのあれ!」
「あぁ!この設定は(以下略
と、沢山散りばめられたオマージュに気づけてより楽しめるだろう。
そして中心となる「100億円使ってこの国をどう変えるか」というテーマは自分だったら~と妄想を膨らませることができて良い。しかもこの携帯の選ばれし持ち主は12人おり、お互いライバルとして策略を巡らせて自分が救世主になろうとするサスペンスな部分も緊張感を演出している。

キャラの魅力も良かった。
主人公滝沢明の王道な主人公も良かったが、この物語の裏の主人公が自分は大好きだ。(ネタバレ回避)
彼は出演シーンこそそこまで多くないものの画面に映ると何か物語が大きく動き出す予感がしてワクワクさせる。コインの裏表のような二人だが本気で日本を変えようとしていたことに変わりはないのだ。
携帯のオペレーターJUIZもいいキャラをしていて持ち主によって人格が変わる設定も楽しめた。語尾につける決め文句も状況ごとに変わるので可愛い。
他にも魅力的なキャラは沢山いたが長くなるので割愛。

褒めてる割に点数が伸びないのには理由がある。
まずは作画。これは完全に好みの問題なのだが、シリアスな題材に少女漫画チックな登場人物の絵は正直好きになれなかった。これを逆に推しているのもわかるが自分はもっとハードな絵で見たかった。
そしてもう一つは売り出し方。
元から劇場版を作る予定で話を進めていたらしいが、アニメ11話だけ見た人は消化不良すぎる!!劇場版まで完璧にみないと全く謎が解けないなら2クールの26話分アニメにすればよかったんじゃないか?劇場版で興行収入稼ごうとしてる感が見えてしまった残念だった。

とまぁアクションも少なめでちょっと大人向けな内容、の割に絵は少女漫画的とターゲット層がごっちゃになってるのは否めないが、
社会派SF系アニメや中身の詰まったアニメを好きな人にはオススメの作品。

ーNoblesse Oblige 今後も映画好きが日本の救世主たらんことをー