桑原

ウォーリーの桑原のレビュー・感想・評価

ウォーリー(2008年製作の映画)
4.1
◎接触がもたらすモノ

『2001年宇宙の旅』でモノリスに触れたサルは知能が向上し、道具を使う事を覚えた。

そして、その道具が発達した果てに進化したサルは宇宙まで飛んで行った。(モノリスの存在は置いておいて)人類史を超短縮した、あの素晴らしい描写が物語るように、知的生物が進化するにあたって「接触」というのは欠かせない要素だ。

しかし、更にその先。道具が究極に進化し、まとまな接触をすることなく、人間が生き延びるようになったのが、この劇中世界である。

◎機械のような人間と、人間のような機械

人類が温もりやふれあいを失った傍ら、地球でひたすら接触を繰り返すお掃除ロボットが、『ウォーリー』本作の主人公だ。
双眼鏡のようなカメラ(目)、箱型のボディ、ロボット感丸出しのアーム、移動用のキャタピラ。
そのルックスは、控えめに言っても作業をする為だけのロボットだ。
だが、そんなウォーリーが小さな子どものように無邪気でひたすらにかわいい。ゴミの山の中に捨てられて、汚れている文明の破片を集めては大事にしている様は、まさに子どもが自分だけの宝物を集めてるかのよう。

そして、『イヴ』との出会い。角張って汚れた自分とは違い、流線型で綺麗な洗練された彼女。
自分とは違う命令をひたむきにこなす彼女の姿に、ウォーリーは憧れを抱く。
すごく分かる。転校生でめちゃくちゃ可愛い子が来たみたいな感じだろうな。

とてもスマートで、遊びの無い彼女に対し、ウォーリーが接触した時、ビビッと電気が走り、まるで彼女にも心が芽生えたかのような仕草を見せ始める。

人間の身体にも微弱な電流が流れており、人と人とがふれあう時、お互いの電流が交わって心も繋がっていく。無機質な被造物であるロボット達で、そんな事をされてしまったらもうたまらないではないか。

ウォーリーとイヴ、両者ともレトロフューチャー的なデザインのロボットではあるものの、非常にスムーズに動く。
対して、人間たちは骨が退化してしまっているが故に、ロボットのテンプレのようなヨタヨタ歩きを見せる、そんな皮肉の効いた描写も素晴らしい。

◎ピクサーのディフォルメ観

リアルな質感のCGであるにもかかわらず、どこかコミックライクな印象を受けるピクサー作品。
それは、どこまでをリアルにして、どこまでをマンガにするか。その判断がめちゃくちゃ上手い。つまり、何を盛り込んだら「リアル」になるかの理解度が非常に高いのだ。故に、あんなに無機質な見た目のウォーリーがいきいきとして見えるし、終盤で機械的な動きをするウォーリーに悲しさすら覚える表現を可能とする。CGアニメーションに落とし込むバランス感覚こそがピクサーの持つディフォルメ観なのかもしれないと、再考する作品だった。


良いところを上げるとキリがないので、ここらへんで終わり。超良かった。
桑原

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