このレビューはネタバレを含みます
首都を大阪に遷都、原発を永久放棄しているとシリーズでは珍しく（初？）if世界を舞台としているが、この設定は最後まで機能しておらず、何故採用したのか謎。
前作の有能な子供と違って、一人の子供がメガギラスを生んだという設定も意味不明。リアリティがない上同行するわけでもないので感情移入させるでもなく、存在意義がない。
前作では知性でドラマを回していたが、本作では全員が揃いも揃って馬鹿まみれ。
政府に根回ししていない超兵器は使用の直前で問題になるし、それを「まあまあ」の一言で承認させ、そのまま使用するはずがいきなり「試運転もなしに使えない」と言い出す始末。なのに強行で撃つので当然のように外す。ディメンション・タイドを外すとその責任をチーム内でなすりつけあうし、軍人が「この分だとお台場辺りに行きそうです」なんて口語で喋ってリアルさの欠片もない。
冒頭で子供が入り込むのも警備が杜撰すぎるし、「お姉さんとの約束」とかで何の措置もなくそのまま帰すのもまぬけすぎ。
リポーターを連れ去る自衛隊も意味不明だし、主人公がボタンを押す流れも何の意味もない。「面白いシーン」をうろ覚えで再現しようとして勢いだけで突っ走っているように思える。メガニューラが成長した、と言った人物に対して「いや、メガギラスだ」と返すシーンがあるが、否定の意味が分からないし、会話の掛け合いも甘すぎる。
本編は全体的に安っぽいドラマに大袈裟な演技で、どうしようもない。
特撮パートは実物の割合が増え、前作よりも出来がいい。
メガヌロンの恐怖演出は冴えており、巨大な虫がビル一面に張り付いて脱皮するシーンは生理的に気持ち悪い。メガニューラはゴジラからすれば小さくて戦いにくく、メガギラスはシンプルに強い。
メガニューラはCGも悪くないが一部操演もあり、メガギラスは全て操演なのが嬉しい。
ゴジラを圧倒するメガギラスをゴジラが攻略し、戦い方を変えるので怪獣プロレスも見ていて楽しい。コマ落ち演出は意味不明だが。
水没した渋谷は実際に水没させたセットも使われて、その異質なロケーションと共に印象深い。
終盤に人間対ゴジラの構図になるのは面白いが、結局クリムゾン・タイドは避けられてしまい拍子抜け。一度目の回避と合わせて理屈がないので興醒め。ドラマパートが終始足を引っ張っていた。
