みゅうちょび

テイク・シェルターのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

テイク・シェルター(2011年製作の映画)
3.6
何の知識もなく鑑賞しました。これは、多分理解されにくい作品でしょう。マイケル・シャノンが出演した「BUG/バグ」がSFのようで実は孤独とドラッグによる狂気を描いたドラマであったように、またしてもマイケル・シャノンは同じような立場の役をこれまた背筋が寒くなるような見事さで演じ切っています。(これより先ネタバレ注意)



これは非常に理解されにくく治療も困難な統合失調症と闘う家族の物語です。
他の人間には見えないものに脅えながら、自分が異常なのかと思いながらも、(主人公は、破壊的な嵐が来ると思い込み、竜巻避難用のシェルターを作ります)大切な家族を守りたい一心で出来ることの全てに財産を投じてしまう。娘の聴覚再生手術を控えているのに、職場も解雇されてしまう。
最初は、体感的な悪夢、そして夜尿、病院で軽い安定剤をもらい、夜は眠れるようになっても、昼間幻覚を見るようになります。本人はそれが、もしかしたら自分にしか見えていないのかとうすうす感じながらも、その恐怖を幻覚であると認めることはできないのです。なぜって、自分が見ている事態が真実だったとしたら、家族に危機がせまっているということでもあるのです。次第にその恐怖に支配されてゆきます。
これは、本当に辛い。しかし、愛する夫が自分には見えないものを見ていると解った妻の苦悩もその比ではないでしょう。
家族が心をひとつにして同じものが見えるようになることこそ、この病気の治療に最も有効なことでしょうが、実際それが叶うことは普通に考えたらあり得ません。
統合失調症である本人の苦悩やその家族がどう病気と闘って行くのかということを描いた作品として評価できる良作であると思いました。

本作のエンディングについては、予知夢だっただのなんだのという解釈もあるようですが、主人公の場合、母親が妄想型の統合失調症で施設に入っており、実際、統合失調症は遺伝性が認められています。最後だけ急に予知夢だったなんて解釈こそナンセンスだと思います。

妻役のジェシカ・チャスティンもとてもよかったです。
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