かの荒木飛呂彦大先生が仰るには、このゾンビという映画は究極の癒し系映画である。なるほど言い得て妙である。
ゾンビに支配されるという腐った世界だからこそ生まれたSSというユートピア。
かつて先人がユートピアを探し求め、そこに内包されるディストピアの存在に気付いた時の絶望がこの映画には映し出されていて、そこにこそ得も謂れぬカタルシスがある。
カタルシスを感じる条件が、画面を眺める安全な他者としての自分であることに気付いた時に映画の持つ本質的な素晴らしさのなんたるかが自明となる。その気付きをもっともシンプルに与えてくれるのがこのゾンビという映画である。
その点でやはりこの映画は超名作だと言わざるを得ない。