薔薇

儀式の薔薇のレビュー・感想・評価

儀式(1971年製作の映画)
4.5
大島渚監督。
親戚の死を知らせる電報を受け取り、子供の頃住んだ島へ帰る。

『サマーウォーズ』のモデルとも言われているのは聞いていたけど、一部内容がかなり似ている。日本の旧家、家父長制、冠婚葬祭を大島渚特有のアイロニーを交えて描かれる。

この作品の3年前の作品『絞死刑』を見た時と同様、物凄くカリカチュアに皮肉な演出をする監督だと思った。親戚が総出の冠婚葬祭のシーンが何度も出てくるが、絶対に真面目には描かずどこか冷笑気味なふざけ方を交える。特に”婚”のシーンが恐ろしい。

佐藤慶演じる祖父がとにかく最高。一家の全てを支配する長、戦犯にも咎められずに戦後の財界に手を伸ばし続ける黒幕としての貫禄はこの作品を象徴している。そんな彼が一度だけ泣くあのシーンは正に『サマーウォーズ』的かもしれない。

『サマーウォーズ』が家族、世界の一致団結を描いた作品に対して、この作品はその脆さ、傾倒の危険さを描いている。「国を守る」という考えが戦後残した”呪い”を主人公や孫達が一身に受け、破滅していく過程を全て見せていた。

小津や黒澤が描かなかった戦後の”全力の負”の部分をここまで自分色に描けるのは本当に凄い。まさにヌーヴェルバーグの作家。この独特な雰囲気、何度も見たい映画。
薔薇

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