たく

儀式のたくのレビュー・感想・評価

儀式(1971年製作の映画)
3.5
儀式の時だけ集まる親族という、形だけの存在の不気味さを描いているような話で、満洲男が祖父を中心とするアクの強い親族関係の網目に何度も絡めとられるようにして翻弄されていく蟻地獄状態に観てて胃が痛くなってくる。
全編通してバルトークっぽいうねるような武満徹のBGMも作品の不気味さを助長してた。

血縁関係が複雑過ぎて訳が分からなくなるんだけど、ドロドロな関係を儀式という上辺の形式に押し込めてしまう強引さが怖くて、それが頂点を迎えるエア結婚式はもう笑いとグロテスクが混在する秀逸なシーンだった。聞こえない音を聞くラストはちょっとアントニオーニの「欲望」を連想した。
軍国主義の象徴として登場する忠を始めとして、敗戦から総括されないままの日本の戦後を重ねていくような意図も感じた。主人公が満洲生まれで名前が満洲男(ますお)っていうのも意味ありげ。
あと、小山明子の美しさには目を引かれたね。娘ともどもなぜか眉毛が無いんだけど。

やっぱり大島渚は一筋縄ではいかない監督で、難解さを感じたけどこれがクセになるんだよね。
たく

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