やま

按摩と女のやまのレビュー・感想・評価

按摩と女(1938年製作の映画)
3.9
少年だったり、その叔父だったり、女であったり、そして按摩のメクラもそうだが、誰一人としてフィナーレを迎えることができなかったように思える。皆が心に、わだかまりを持ちながらこの映画は静かに過ぎ去っていった。

メクラという設定を様々な形で見せてくる。時には笑いに使い、そして悲しくも使われた。「ぼくの目の届かないところにいってください」ぼくの目はいつもあなたを見ていた。素敵だなぁ。こういったセリフやシーンをみて、最近では「タレンタイム」なんかを思い出させられる。


演技の点については、凄すぎると。本当に目が見えない人のようにしかみえない。
動作や、目の動かし方、顔の動かし方。全てが良かった。

なんといってもこの時代独特な空気感がこの映画の魅力でしょう。旅館のあの感じ、山が見える、川がある、橋がある。近代化するにつれて昔のそういった雰囲気が失われていき、今の人たちにはその時代のモノが美しく感じれる。

そしてそれを生かした構図。写真を見ているかのように一つ一つが綺麗。でも動かすところは動かすそれが映画らしい。
石を投げ込む二人の姿は、なんて素敵なんだと。さりげない石が落ちる音も気持ち良かった。もちろんラストシーンも素敵。


想う相手を見るときは、目でなく、心で見るもんだと、教えてくれたこの映画。
ただ人生の厳しさもジワジワと感じさせてくるんだ。。。
やま

やま