SatoshiIto

野良犬のSatoshiItoのレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
4.5
昔観た時には全く気づかなかったけれど、これは「責任」についての映画である。

自らの拳銃を掏られた若手刑事がそれによって起こされる事件に責任を感じ悩む。

しかし、ここで述べられている「責任」はもっと大きなものに対してだ。公開は1949年、戦後4年の社会状況の中で、戦争中や戦後に行われた「悪いこと」を、全ては戦争や時代のせいにして、その責任をうやむやにしようとする世相や人々の気分に対して、この映画は断固としてノーを叩きつけている。

よく比較されることだけれど、従軍経験のない黒澤は、従軍経験のある三船敏郎を起用し、従軍経験のある小津安二郎は、従軍経験のない笠智衆を起用した。
2人ともその作品は愛してやまないのだけれど、全てを「そうだなあ」ととぼけて従容してしまう笠智衆よりも、体臭が匂い立つような野性味にあふれ、全く忖度しようとしない三船の方に、今はシンパシーを覚える。

『羅生門』や『生きる』などよりも前の作品。編集など荒削りなところもあるけれど、映像や対位法など見事としか言いようがない。

戦後直後、真夏の東京。皆が埃と汗にまみれて生きている街、東京の風景が何よりも素晴らしい。
SatoshiIto

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