星降る夜にあの場所で

はなればなれにの星降る夜にあの場所でのレビュー・感想・評価

はなればなれに(1964年製作の映画)
4.4
昨年、フォロワーさんの「欲望の翼」のレビューを読んでから思い出せなくて気持ちが悪かった「脚の無い鳥」というキーワードが出てくる他作品。
今日、ふとしたきっかけで思い出せた。
はぁ~すっきり♪

で、本作品。
「映画史」等の作品からゴダールはちょっと…という方でも気軽に観れる作品。
ゴダール自身、単純明快な作品を目指して作ったと言及しています。

皆さんのまわりに『テスト前の何日しか勉強してないよ』なんて言いながら、常に学年で10番以内の成績をキープしているような奴いませんでした?
当然の如く、普段からしっかり勉強しているわけです。
アンナ・カリーナ曰く、
~ジャン・リュックは私と一緒にいるときでも、何もしていないことがなく常に動き回っていました~
ゴダールの即興は、一般的に認識されている即興とは異質のもので、敬愛する松田優作さん同様24時間映画のことしか考えていない人間だからこそ成せる【計算し尽された即興風の演出】なのです。
そんなことを言ってるアンナ・カリーナも、本作で美術館ダッシュと人気を二分するカフェでのマディソン・ダンスの振付を自ら担当し、全く踊れなかったサミー・フレイとクロード・ブラッスールを撮影期間中の自主トレ(2週間)で形にしています。

遊び心なんてもんを通り越して、鑑賞者を弄ぶような天真爛漫な作風に苦笑い。
観ていて終始、対極的な要素がひしめき合っていた我が青春時代を彷彿させ、堪らなく愛おしくもありこっぱずかしくもあった。
ゴダール独特の時間軸上で、三人の主要キャストが文語小説的とも言えるような奇抜な演出下で縦横無尽に動き回る姿を目で追いかける作業がもう楽しくて仕方がなかった♪
さらっと通り過ぎていく台詞一つをとっても、しっかりとゴダールのこだわりが詰まっているのです。

このクオリティの作品をたった25日で仕上げてしまうゴダールはやはりバケモノなのだと思います。
ゴダールのフィルモグラフィーにおいて「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」を繋ぐレールのような役割を担っている本作は、ゴダールを語る上で絶対に外せない作品。

今年、新宿を皮切りに全国でロードショーされるようですね。
私も15,6年ぶりに、是非スクリーンでもう一度観てみたい。
皆さん、パッと見チープな犯罪劇に見えますが(ゴダール自身は失敗作だったと言及していますが、それは本国での公開当時駄作だと叩かれたことへの言い訳だと私は解釈しています)、そんなゴダールの巧妙なギミックに騙されちゃいけませんよ☆彡