高田ティガ

リリイ・シュシュのすべての高田ティガのネタバレレビュー・内容・結末

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

14歳は〈ことば〉という知性を持たない。

14歳だって、オトナとおんなじ事を考えているんだけど、それは〈ことば〉にならない限り、他者に理解され共有されることはない。

「リリイ・シュシュ」という音楽がそう。音楽は「書き言葉」を持たないメディアだ。
文学と比べて、音楽が劣っているとは誰も言わない。しかし、音楽の分の悪さは、それは、口承伝統、すなわち「話し言葉」しか持たないアフリカの叡智が、「書き言葉」を持つヨーロッパによって、歴史を蹂躙されたのとまったく同じだ。「書き言葉」が歴史をつくり、政治を生む。

「エーテル」もけっきょく最後まで意味が明かされることはない。14歳の当事者たちには、なにか確かに意味がわかって使っているのだろうけれど、それも所詮、ネットの掲示板という世界の中でしか通用しない言語で、世界の外にいる他者にはわからない。


14歳は、政治から阻害されている。
市原隼人は、それを体現するように恐ろしく喋らない。


〈ことば〉から阻害された言動、すなわち、広義の「他者」によって理解されないものは、〈狂気〉と見做される。

これは14歳の話なんだろうか?

……オシャレ映画や鬱映画ではないんじゃない?



わからなかったのは、ドヴュッシーのアラベスク、最後の「ミ」がないこと、かな。