ナイトリッチ

アラビアのロレンスのナイトリッチのレビュー・感想・評価

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)
3.8
★第一次世界大戦のさなか、イギリス軍のロレンスは、アラビア語が達者なことから、アラブ民族の王子をイギリスに協力させる工作任務に就くことになる。
アラブはトルコからの独立闘争の真っ最中でもあり、民族同士が水や土地を奪い合って常に覇権争いをしている状態でもあった。
民族がひとつにならなければ、このままでは独立はおろか、他国の植民地になってしまうと説き、命を賭けてアラブ民族を導いていくロレンスに、アラブの人々も次第に心動かされていく。

#いやあ……こんなに綺麗な映画、久しぶりに観た。
行ったつもりアラブツアーって感じ。
真っ青な空と真っ白い砂漠の対比、そこをぽつぽつラクダに乗って歩いていくロレンスたち、
夕陽で真っ赤になった砂漠、夜の砂漠。
アラブのお洒落テント。宴会。
ものすごい引きのカットで、人間と自然の対比を撮ってくれてるのね。
360度何もなくて、地平線と蜃気楼と空と太陽だけの場所、行けども行けども砂丘、岩場。
4Kレストア版をテレビで観たんだけど、機会があったら是非とも、是非とも映画館で観たいよ……これはスクリーンで観るための映画だ……。

#歴史映画で3時間半ちょっとは長いな〜と思って今まで敬遠してたんだけど、映る景色が本当に綺麗だったから、大満足にアラブの日々を過ごせます。

#子供が流砂に飲まれるシーン、怖すぎた。何もできなくて、「助けて!」って叫ぶ子供が沈んでくところを見てるしかできないの……。

#100頭200頭の馬やラクダ、人間たちが砂漠を駆けていって、入り乱れて戦う迫力といったら!
今は何でもCGで作れるけど、この映画が撮られた時代は、CGなんてなかったわけで……もうね、どうやって撮ったんだろう?の連続。作品の熱量に感服します

#終盤、ロレンスが敵の将軍に捕まって拷問されてオカマ掘られてしまうシーンがあって。
といっても直接そういうシーンはなくて、ロレンスを裸に剥いた将軍が色目を使ってきたことにゾッとして抵抗したせいで、散々鞭撃たれるロレンス、その様をじっと見つめる将軍、夜中になって外へ放り出されるロレンス、だけのシーンなのね。
だけどその後のロレンスの放心ぶり、ぎこちない不自然な歩き方、常に何かに怯えてるような様子がレイプ後って感じで物凄く怖い。いたたまれない。
それまで自信満々で男らしかったロレンスが、急に打ちひしがれた女の人みたいになる、その演じ分けが凄まじい。

#アラブにもイギリスにも尽くしてきて、英雄扱いされていたロレンスが段々、アラブにとってもイギリスにとっても邪魔者扱いされていく様がきつかった。
漠然とアラビアを発展させるために頑張るロレンスくんの映画というイメージでふわっと観てたんだけど、まさかこんなに悲しい映画だったなんて知らなかったわ……。

#この序章・真ん中・ラストに黒背景で音楽が流れる感じ、ああ今、古い映画を観てるな〜!って実感湧きますね!情緒を感じる