しあつん

失われた週末のしあつんのレビュー・感想・評価

失われた週末(1945年製作の映画)
4.0
一人のアル中の男の話なのに、先がどうなるのか気になって仕方がない。

途中少し笑える要素もありつつ、持続した緊張感があり、こちらが幻覚を見ているのだと錯覚するほどに、アル中の人の見る幻覚がしっかりと表現されているのがよかった。

また、主人公が自殺を決心してから思いとどめるまでのスピードが怖い。小説家として売れない主人公は何かしらの物語を書こうとして書けず葛藤して、少し書けたと思ったらやはり書けないと中断し、再度挑戦していく。酒を飲むためのコップの水で作られた円が幾つにも重なったように、無限に続いていくのだろう。

アル中の怖さを味わうこともできるが、創作の苦しみそのものを描き、創作の苦しみとは一体何なのかと私たちに問いかける作品だと思った。アル中的な苦しみを味わわなければ、物を作ることはできないのだろうか…?
しあつん

しあつん