Genichiro

雪の断章 情熱のGenichiroのレビュー・感想・評価

雪の断章 情熱(1985年製作の映画)
4.6
没後10年記念の2011年に台風クラブをシネヌーヴォで見てから10年経ってしまったなあ。ションベンライダーは序章に過ぎなかったのか、台風クラブ・ラブホテルと同年公開というからすごい。今作では違和感を感じない箇所がほとんどない。凄すぎる。孤児の求める愛、受験、殺人事件の真相という複数のストーリーラインが全てコンフリクトしている。当然納得なんかできるわけもなくラストを迎える。普通の感覚だとこれはダメだろーと思うが、今作ではその投げっぱなしのめちゃくちゃっぷりに感激してしまった。普通の映画だったら受験勉強とかもじっくり描いて後半の展開に結びつけたりするだろう。あの犯人のバックグラウンドもじっくり描いたりするかもしれない。それで140分くらいの映画になってたら目も当てられない。特にこの数年、映画で何かを語りきれると勘違いした作家の長尺映画を見て何度もうんざりさせられていたからほんとに嬉しい気持ちになった。最高、本当に素晴らしいよ。序盤から薄々感じていたある違和感が中盤のある展開で爆発。これやっぱロリコンの話やんけ!気持ち悪すぎる!受験の話を伏線としてちらつかせておきながら、北大受かったのにあっさり諦めて博多行きを決めるとかどういうこと??反復される自殺未遂の果てに…というのもあまりに呆気なすぎる。いやーなんなんだこれ、すごい。すごすぎる。冒頭、謎のダンスシーン、桜の木を囲んでのシーン。素晴らしく意味不明な長回しだ。通常の会話シーンですら、まともには見せてくれない。全く違う場所にいるはずの二人を同時に映す、ああなんて素晴らしい。映画だなあと思う。途中斉藤由貴が逃げ出して駅でピエロを目撃する幻覚?シーンとかやはりATG風味入れてくるよなと改めて思った。水、祭りとかその後の相米慎二作品でも反復されるモチーフが今作でも表れている。あからさまに人工的なセットも素晴らしい。個人的にはお引越しと並んで相米慎二のベスト作品の一つになった。今作が大林宣彦の姉妹坂と二本立てだったと知って納得!大林宣彦との共時性を他の作品でも感じていたがやはり間違いではなかった。
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