Tanuki

007 スカイフォールのTanukiのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
4.0
ダニクレボンド3作目の異色作。ヴェスパーとの別れを想起させる、深い水の底にボンドが落ちていくオープニング映像に鳥肌立つ。やっと上司からの信頼を取り戻したボンドが、今度は「古物」扱いされるのはちょっと可哀想。Qの大幅な若年化も相まって、大テーマは「世代交代」。

ボンドへの「時代遅れ」「オールドファッション」という評価は、そのまま007シリーズへの世間の評価と繋がる。もう世の中は変わった。自分も変わらないままではいられない。過去の自分を断ち切って、逃げ続けた感情と正面から対峙するドラマは007とは思えないくらい重厚。

シルヴァの目的が明らかになる瞬間はやはりちょっとギョッとするね。これまでの敵役とは色が違う。諦観と愛情を欲する心に引き裂かれて、何もかもぶっ壊して自らも消えようとする。あまりにもセンチメンタルで、ボンドにとっては共鳴し合う存在でもある。

横暴で傲慢に振る舞うボンド。女性の体を求めても、心まで求めようとはしない。そんな自暴自棄にも見えなくない生き方を、人生への諦め、シャットアウト、ある種の自傷だと解釈するのは本当にすごいなと思う。ダニクレボンドはとにかく生きづらそう。もがき苦しんでる。

シルヴァが委員会に乗り込むシーンの既視感は、確実に『ダークナイト』から来るものだし、彼の狂気に支配されたキャラクター造形は明らかにヒース・レジャージョーカーだよね。007シリーズ、その時流行ってる作品に影響されやすいのが、振り返る時に面白いやつだ。
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