BOB

妻は告白するのBOBのレビュー・感想・評価

妻は告白する(1961年製作の映画)
4.0
増村保造監督、若尾文子主演のサスペンスドラマ。

妻とその若い愛人と共に北穂高の岩壁で宙吊りとなった男が転落死。その妻に殺人容疑がかけられる。

「人を殺す人間に人を愛することができるんだろうか」

これは傑作。『深夜の告白』を想わせるジャパン・ノワールといった趣き。増村保造×若尾文子の作品は、『青空娘』に続いて2作目だったので、あまりの作風の違いに驚いた。

女は有罪かそれとも無罪か。事件の真相を追うサスペンスも面白かったが、それ以上に裁判の判決が出た後の纏め方が秀逸だった。登場シーンは少ないものの、幸田の婚約者がキーパーソンとなっていて、確実に的を得た言葉を吐いていく。本当の"人殺し"は誰なのか、この事件の背景にある社会構造的な問題を鋭く指摘する。ハッとさせられた。

ジャパン・ノワール。ドラマパートは、アメリカのフィルム・ノワールより湿っぽく人間臭くドロドロしている。画作りは完全にフィルム・ノワール。陰影のはっきりついたモノクロ映像、バシバシにキマった構図。ラストカットを筆頭に影の使い方も巧い。

若尾文子のファム・ファタールっぷりも見応え十分。愛に狂う姿や雨に打たれたずぶ濡れ姿は、背筋がゾッとするほどの異様なオーラを放っていた。

テーマは愛。命懸けで愛に狂う。女心ととるかキチガイととるか。男女によって、解釈が変わるのかも。

女の愛人役は、『浮草』でも若尾文子と恋人関係だった川口浩。世の中を知らない育ちの良いお坊ちゃん感がハマっている。本作の一番の"探偵"役は彼。

574
BOB

BOB