櫻イミト

真夜中のパーティーの櫻イミトのレビュー・感想・評価

真夜中のパーティー(1970年製作の映画)
3.5
「エクソシスト」(1973)「フレンチコネクション」(1971)のフリードキン監督の前作。ハリウッド映画史において初めて同性愛を真正面から描いた作品。1968年初演の大ヒット舞台劇を同性愛者である原作マート・クロウリーの脚本で映画化。日本では1972年にATG配給で公開。

同時代のニューヨーク。マイケルのアパートでゲイ仲間ハロルドの誕生パーティーが8人で開かれた。そこにマイケルのストレートの友人アランがパーティーとは知らずに訪ねてくる。彼の存在がマイケルたちの心に変化をもたらし、やがて、愛する人間に電話をかけ告白するというゲームを始めるのだが。。。

映画はほぼすべてがアパートの一室でのゲイたちの会話で展開する。。現在よりも同性愛に対する差別が激しかった時代の、マイノリティーたちの苦悩が赤裸々に語られている。最も大きな苦しみは他者とは違う自分自身への自己嫌悪で、その痛みは私にも少なからずあるので共感できた。会話劇で退屈するかもと思っていたが、演出が巧みな心理サスペンスのように集中して観ることが出来た。

気になったのは、酒の入ったマイケルが自分の悩みを叩きつけるように振舞うが、周囲の対応が寛大すぎるように見えた。同じ苦しみを持つ者同士の連帯なのか?その辺りの心情がストレートである自分には推し量りきれなかったと思う。通常ならマイケルのような高圧で自己中心的な態度は許されないだろう。

マイノリティーゆえゲイのパートナーを見つけられないと一生孤独になるという不安が切実に描かれていた。しかし、ゲイではなくストレートでもパートナーを持たずに生きている自分からすると、まず他人に依存する甘えを克服せよと言いたくなる。普段から迫害を受けているとそうもいかないのか・・・。「セルロイド・クローゼット」(1995)によると、ゲイが全員生き残ることがそれまでの映画では無かったことだそう。

先日観た濱口竜介監督「PASSION」もマンション一室の会話劇だった。チャラい恋愛を男女がグダグダ語り合っていて、本作と比べたら実に軽薄に感じてしまう。
櫻イミト

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