とうがらし

M/OTHERのとうがらしのレビュー・感想・評価

M/OTHER(1999年製作の映画)
3.7
1999年カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞 受賞作

子は生まれて、親を親と認識するが、親は、はじめから親として生まれていない。
子の前で、親を演じることで、次第に親が板につく。
子は新たに出会った女性を、母と認識していないが、女性は気が付いたら母になろうと、必死に親を演じていた。
女性は母が板につく頃に、子は女性の元から去っていく。
男性と同棲する女性が、男性と離婚した妻の息子を預かる葛藤を描いた話。

邦画の即興劇の中でもすぐれた作品。
物語自体に新しい視点はないが、ディテール(余白)のリアルさで魅せる。
即興といっても、その場で思いついた適当な言葉には見えない。
監督から物語の骨格のみを与えられた俳優は、物語の内容よりも、役柄のバックボーンを相当考えてから、撮影に臨んだのではないだろうか。
デジモンのくだりは、即興じゃないと思いつかないかな?

別に面白いドラマというわけではないけど、ワンカットの緊張感からじわじわ心に染み入る。
音質は決して良くない。
抑圧されたピンマイクのノイズ音は、かろうじて、フィクションだと実感させる。
”演じる”は、なにもドラマにおける特別な行為ではなく、日常生活に息づいている。
とうがらし

とうがらし