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菊豆(チュイトウ)のBOBのレビュー・感想・評価

菊豆(チュイトウ)(1990年製作の映画)
3.7
チャン・イーモウ監督&コン・リーコンビの第3作。

1920年代中国のとある田舎町。大金を積まれて染物屋の老主人のもとに嫁いだ女性が、夫の横暴さに耐えかね、彼の甥と恋に落ちる。

❤️‍🔥

決して報われることのない禁断の愛の物語であり、官能的かつ恐ろしい不倫劇でもあった。愛欲に溺れ、破滅の道を辿っていくヒロインの姿には居た堪れなくなる。ファムファタールを主人公にしたノワール映画のようにも思えた。

頑なに無口無表情を貫く息子は何を意味するのだろう。"女性を不幸に導く男"に罰を下す仏の化身かなにかなのか。終始、不気味で異質な存在であり、ただの人間には思えなかった。包丁片手に猛然と追い駆ける姿には戦慄が走った。1度目はニヤッと悪魔のような笑みを浮かべたが、2度目は笑わず無表情を貫いたのも意味深だった。

チャン・イーモウ監督らしいカラフルな"色"が恋愛の浮き沈みを物語る。土と木の色のお屋敷に、紅、橙、黄、藍、緑、白など、染め物の鮮やかな色がよく映えた。この色彩の豊かさは『HERO』で絶頂に達することとなる。

"棺止め"という葬送儀礼が興味深い。白装束の身内2人が運ばれていく棺を何度も泣きながら止めに行く。

小さな穴👀から大きな穴🕳へ。見る/見られるの逆転。

封建的な家長制度下において、金持ち親父のもとに嫁いだ若い女性が苦難に満ちた結婚生活を強いられる話。逃れられない運命を必死に受け入れ、目の前の人生を逞しく生き抜こうとする女性をコン・リーが好演。中国の伝統的な建築とリアルな生活描写。『紅いコーリャン』、本作、『紅夢』と、チャン・イーモウ監督の初期3作には共通点が多い。

66
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