YukiSano

去年マリエンバートでのYukiSanoのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.1
映画史上でも最も難解でシュールだと評判の作品でディヴィッド・リンチなど後世の前衛作家に影響を与えたマスターピース映画。

ある男が人妻に「去年マリエンバートで僕らは愛し合いましたよね?」と話しかけ、人妻は覚えていないと言い張る物語。

そこから何度も、同じセリフと行動を別の視点から何度も繰り返し、ちょっとずつ衣装や舞台を変えてリピートする。

金太郎飴のように永遠に同じ時の繰り返し、だまし絵のような構図とカメラワーク。ほんの少しの異なるシチュエーション。迷路のようなループ。舞踏会にいる幽霊や人形のような人びと。

この映画を観る人は、ループから抜け出せるのか不安にかられながら、少しずつ頭が恍惚に麻痺してくるのを感じるかもしれない。

この作品は、現在、過去、男の主観、女の主観をバラバラに存在させ、それらを編集で混ぜたと言われている。

しかし、現代の多次元宇宙論が語られる時代にこれを観るとSFとして考えて楽しめる。

五次元空間に陥った話なのか、タイムループなのか、冥界に落ちたゴーストなのか、誰にも分からない。

ただ愛した記憶だけが延々と繰り返される。

最後は抜け出したのか?はたまたループするのか?

観るものを眠れない夜に誘う覚めない夢だった。
YukiSano

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