フランスのヌーヴェル・ヴァーグの旗手、ルイ・マル監督が撮った「さよなら子供たち」は、戦争が引き裂いた二人の少年の間に芽生えた友情と別離を、感傷に訴えることなく淡々と描いた珠玉の名作だと思います。
この映画「さよなら子供たち」は、1977年以来、創作活動の場をアメリカに移していたルイ・マル監督が、10年ぶりに母国フランスに戻って撮った、"魂を揺さぶる"秀作です。
映画を観終えた後、目頭が真っ赤になっていた自分がそこにいました。
ルイ・マル監督は、かつてなく自伝的色彩の濃いこの作品で、感傷に訴えることを意識的に避けているような気がします。
第二次世界大戦下のフランスで過ごした自身の少年時代の痛ましい記憶を扱いながら、驚くほど抑制の効いた映画を撮ったと思います。
主人公の12歳の少年、ジュリアン(ガスパール・マネッス)は、ルイ・マル監督の分身だと思いますが、このジュリアンは、戦争を避けて、ファンテーヌブローに程近いカトリックの寄宿舎に疎開することになります。
そこに転入生3人が入って来ますが、彼らは実は神父がゲシュタポからかくまっているユダヤ人なのですが-------------。
そして、そのうちの一人、ジャン(ラファエル・フェジト)は、ジュリアンと同じクラスになり、やがて二人の少年の間に友情が芽生えていくのです。
しかし、全ては避けることの出来ない悲劇的なクライマックスへと収束していくことになります。
ルイ・マル監督は、まるでアーチェリーの射手のように、狙いを定め、ゆっくりと弓を引き絞るのです。
そして、ラストの一瞬、矢は放たれ、我々観る者の心を真っすぐに射抜くのです-------------。
ルイ・マル監督は、間違いなく彼の生涯で最も重要な、意味ある作品を撮ったのだと思います。
尚、この映画は1987年度のヴェネチア国際映画祭で、最高の作品に授与される金獅子賞を受賞していますね。