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鞍馬天狗 御用盗異変
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『鞍馬天狗 御用盗異変』に投稿された感想・評価

kuronori

kuronoriの感想・評価

3.5
アラカンの鞍馬天狗です。

原作者自らが立ち上げた鞍馬天狗プロダクションによる「新鞍馬天狗」シリーズは、一年に5本、二年間の契約だったのですが、全く客が入りませんでした。
主演の小堀明男も、全てをアラカンと比較されて酷評されました。
結果、3作まで作ったところで打ち止めとなります。

そして、東宝系映画館側が、この3作による損失の補填の為、アラカンの鞍馬天狗復活を要求したのです。新鞍馬天狗のプロデューサーでもある原作者大佛次郎は、その要求を飲まざるを得ませんでした。
かくして、嵐寛寿郎の鞍馬天狗は復活しました。
以上の情報を踏まえた上での鑑賞です。

松島トモ子の杉作です。愛らしさ大爆発です(笑)。
演技巧者の深みは、美空ひばりの方が何倍も上です。しかも子供とは思えない見事な歌までうたってみせます。かたや松島トモ子には愛らしさしかありません。しかし、このひとつしかない武器がとんでもなく強力です(笑)。いい勝負です。
大友柳太朗の「丹下左膳 決定版」でチョビ安をやった時も相当関心しましたが、この杉作もなかなかのものです。
(追記、その後、次作での松島トモ子さんの愛らしい歌声を拝聴しました。失礼なことを書きました。申し訳ありません。)

原作の題は「御用盗異聞」です。過去の映画化でも「異聞」でした。何故か今回に限り「御用盗異変」なんですね。
御用盗とは、徳川に大政奉還されてしまい、討伐の大義名分を失った薩摩側が、旧幕府を挑発するために江戸市中で行った武装略奪行為のことです。西郷の密命を受けた益満休之助がリーダーでした。
(余談ですが、昔NHKの『風の隼人』で西田敏行さんが演った益満休之助が、メッチャ格好良かったです。)

さて、ここで鞍馬天狗は盟友である薩摩藩が行う御用盗に対して反対し、敵対することを明言します。手段に関わらず勤皇側につくということはしないということです(わかりにくい(汗))。目的のために手段を選ばないのを否定し、常に、暴力にさらされる立場の人を守るのだと。
これはある意味理想論なんですが、これを言ってのけて、似合う俳優でないと鞍馬天狗はやれないわけです。
いろんな人が鞍馬天狗を演っていますが、嵐寛寿郎以外に、鞍馬天狗を演って大当たりをとった俳優は居ませんでした。

本作では、前作の「鞍馬天狗 疾風八百八町」よりは、天狗に覇気があります。しかし、以前のようなノッてる感じはありません。

アラカンの鞍馬天狗は、次作の「疾風!鞍馬天狗」で最後を迎えることになります。
新しい爆薬と毒薬製造法をめぐる、薩摩藩と悪徳商人の争い。最後に製造法の図面は燃えて、悪徳商人は天狗に斬られる。天狗は「私はショミンの味方ですよ」と口癖のように言う。