TaiRa

漂流教室のTaiRaのレビュー・感想・評価

漂流教室(1987年製作の映画)
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大林宣彦の基準で考えればこのくらい普通だよな。まぁ狂ってるけど。一応原作読んでます。

ファーストカットから何故か『サイコ』のシャワー受けショットの真似とかしてて(成功してないけど)開始2秒で混乱させるんだけど、その直後から主人公の翔ちゃんが全裸で母親(三田佳子)のおっぱい揉みしだいたりするもんだから、とくにかく大変な映画であるという事は伝わった。移動ショットを高速で繋ぐ編集とかいつも通りと言えばそうだが、何度観ても食らうのが大林映画。何故かインターナショナル・スクールに設定変更されており、味の濃すぎる外国人同級生たちがわんさか出て来る。漫画的というか戯画化された外国人みたい。新人教師の南果歩が女子小学生と並んで美少女枠で出ていて、中年外国人教師(トロイ・ドナヒュー!)に片想いされているという、無理矢理な年の差ロマンスもぶっ込まれている。学校が超未来へ飛ばされる時の描写がテンション高い。その直前が唐突なミュージカル場面なので観ている側の精神が振り回される。光の点滅や色が乱れる視覚効果を用いたサイケデリックな画面+カメラの極端な揺れで何が起きてるのか分かりづらいが妙に緊迫感はあるパニック描写。子供たちの阿鼻叫喚が不安を助長させる。尾美としのりの関谷とかサイコ野郎な造形で中々良いし、カフェテリア占拠場面における過剰な展開とか最高である。原作の流れを一通りなぞってるけど、そのなぞり方がかなり大雑把なので無駄な勢いが生まれている。関谷に殺されそうな翔ちゃんがお母さんに念で助けを求める名場面、映画では念をキャッチした三田佳子がバットを持って走り出す。三田佳子が狂人ママやるの似合う。学校の異変に気付いて走り出す三田佳子と学校のパニックをクロスカッティングするとこも良かったな。後半は巨大ゴキブリ軍団との死闘になったりするんだが、これも結構楽しい。ユウちゃんと仲良くなるキモ虫のキモさが凄い。原作と同じっちゃ同じだけど、結末の飛躍にヤバさが増してた。観念的というか寓話的というか、希望としての子供の世界ってのは分かるし、大林宣彦が未来の世代にしか向いていないのは晩年まで一貫してるんだけど、最後に見せられる砂の惑星=地球には絶望しか感じないだろう。
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