Chico

春のソナタのChicoのレビュー・感想・評価

春のソナタ(1989年製作の映画)
4.0
高校教師(哲学)のジャンヌはいとこにアパートを貸していたが、その滞在が延び、パーティで偶然出会った音楽生のナターシャの家に住まわせてもらうことになる。ナターシャは父の恋人のエーヴを嫌っている。しかし父の説得でエーヴと夕食を共にすることになり…。いつものように友情や恋のごたごたが描かれます。

主題曲はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調<春>。タイトルはそこからとったのだと思われます。

撮影がほぼ室内で定点観測のようで地味目でしたが、それと対比するように花々の美しさが際立っていて一定の間隔で登場するのが作品にリズムを与えていたと思います。そして家というプライベートな空間での掛け合いによって、彼女達の人生の他の部分(彼氏との関係性や職場や学校での様子等)を知らずとも彼女達自身の事が良く理解できました。

いつにも増して何も起こらなように見えたし、ジャンヌがまともキャラで、ロメール作品に珍しく作品の中の良心として機能していた。だけど、それが少しずつ揺らいでいく。その心の機微が繊細に描かれていた。だからこそのラストの彼女の反応。
何も起こらないはずだったのにまんまと巻き込まれました。

セリフが面白くて、物事をすぐに一般化して話すことを揶揄するような場面や、壁紙のダサさを指摘する下り、ほんとそうよ、となりました。

しかしナターシャ、子犬みたいで可愛いんだけど他人の関係性に干渉したり、すぐ感情的になるのにはイライラしました。

花々の美しさが際立つ🌷
Chico

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