『最後の1秒まで続く緊張』
ドイツ軍の捕虜となった連合軍が250人の「大脱走」を企てる。
史実だが、思ってもいないような方向へと向かっていく本作。
前半はコメディ色強めの脱走劇。脱走方法についても忠実に再現されていると言うので、様々な脱走方法の提案に捕虜の試行錯誤が伺える。
しかし、前半の脱走も大成功とはいかず、後半の逃亡劇はゲシュタポの残酷さを知る何とも恐ろしいもの。
脱走自体にカタルシスがない分、緊張感が続くのが本作の魅力。
ラストカット、ヒルツの笑みとボールの壁当て。
物語序盤から続くこの行動に、ヒルツの中ではまだ脱走が終わっていないことがわかる。
このラストの演出まで、物語のトーンに合っていて、流石名作と言われるところである。
何が正しいかなんてわからない。短い人生を全うして、抜け出そうとする捕虜、とりわけヒルツの姿勢はジョン・スタージェス監督作『OK牧場の決斗』のワイアットとドクにも通じる。
スティーブ・マックィーンのワガママで撮ったらしいバイクシーン。
とにかくカッコ良く、キャラクターの特性に合っている分後半の見応えが増している。
道具屋、偽造屋等キャラクター毎の役割を回収し、群像劇としても非常に楽しく良くできた完璧な作品。